タイ、インドネシア、エストニアなど初め、近年世界各国で急速に発給が始まった「デジタルノマドビザ」。2024年1月には韓国でのデジタルノマドビザも始まりました。日本での発給も決定しており、日本の経済、地域活性化への機会としても期待されています。日本の国際化、グローバル教育への後押しにもなるのではないでしょうか。
「デジタルノマド」って何?という方は下記の記事をご参考ください。
日本へのデジタルノマド誘致の先駆けとも言えるイベント「COLIVE FUKUOKA」が福岡でも開催されました。
上記の記事でも紹介されているように、日本に来ることに興味がある外国人は本当に多いです。
私は、この2年で20ヵ国以上からリモートワークしてきたのですが、ノマド先で会った外国人に「日本は一番行きたい国だよ!」と何度も言われました。嬉しいことですよね。
ただ、欧米のノマドたちにとって「アジアのタイムゾーンは仕事をするのが困難」「英語があまり通じないのが不安」といった懸念点が挙げられます。本記事では、日本のノマドビザ発給に伴い、インバウンド戦略に役立つ問題点と解決策、海外から得た知見をまとめていきます。
日本のデジタルノマドビザとは?
2024年2月現在、日本のデジタルノマドビザについて現在公開されている情報は下記となります。
・開始時期:2024年3月末までに開始予定
・対応国:米国を含む49カ国
・条件:年収1000万円以上(67KUSD)の外国人リモートワーカー
・期間:最長6ヶ月
・家族と子供もOK
この発表を受けて、すでにインスタグラムやTikTokでは多くの外国人インフルエンサーが日本のデジタルノマドビザについてのコンテンツを作成しています。
3月の正式スタートに向けて、詳細条件の発表に目が離せませんね。
「外国人旅行者」と「外国人デジタルノマド」の違いは?
外国人ノマドは比較的高所得な人が多い
デジタルノマドは、比較的高所得な人が多いというデータが出ています。私も外国人ノマドと一緒に食事などに行くと、物価が安い南米でも良いイタリアンや日本食レストランなど、日本とあまり金額が変わらないところに行くことが多く、想定より出費が多くなりました。
節約思考のバックパッカーと違い「質の高い美味しい食べ物」「価値のある体験」「特別なアクティビティ」に簡単にお金を払う傾向があるように感じます。
利便性を重視する傾向もあるので、移動が難しかったり、治安が不安な場所では迷いなくUberなど配車サービスを使います。
外国人ノマドは基本的に仕事をしているので忙しい
仕事をしながら観光もして、さらに次に訪れる街までの移動手段や宿泊先を調べて・・ノマド生活は基本的に大忙しです。午前に仕事して、一度外に出かけて、また仕事したりとオンオフを細かく切り替えて短時間集中して仕事をこなしている人も多くいます。
外国人ノマドは観光客より長期滞在をする傾向にある
前述の通り、仕事をしながら滞在しているため、滞在中ずっと観光はできないので、その分1都市に1、 2ヶ月滞在するなど通常の観光客よりも長期滞在することが多いです。現地の言葉を学んだり、現地の文化に触れたりすることを楽しむノマドもいる一方で、そういったことにはあまり興味がない人もいます。
外国人ノマドは母国の時差に合わせて深夜に働くことがある
アメリカ人や南米のノマドにとって、本国の就業時間の9〜18時は、日本の23時〜早朝となります。
京都と東京を2週間一緒に旅したアメリカ人の友人は、毎晩私が寝る23時頃にホテルの共有スペースにいき仕事をし、私が起きる頃にげっそりしながら戻ってきて、午前中に寝て、午後から観光するというハードな生活をしていました。彼女のお気に入りは、コンビニで売ってるブラックガムでした。
他にもアメリカから来ていたエンジニアの友人と昼に会った時に、「もう何日も寝ていない(夜は働いて、昼は遊んでる)」と言っていました。ノマドの生活はなかなかクレイジーです。この時差がネックで日本に来れないと言ってるノマドも多くいました。
外国人ノマドはアクティブでアウトドア好きな人が多い
これも全てのノマドが当てはまるわけではないと思いますが、私が2022年の夏にポルトガルのノマドリトリートに参加した際に感じたことです。
リトリートの期間にみんなで海に行って、サーフィンをしたり、毎日のようにロッククライミングジムに行ったり(滞在先のパッケージとして、ボルダリングジムの利用が無料で含まれていました)アクティブに過ごしている人がほとんどでした。
初めてのサーフィンでも乗りこなしているメンバーが多く、運動神経も良く高所得も得られる優秀な人ばかりですごいな…と、感心していました。
外国人デジタルノマド向けのインバウンドマーケティング観光戦略とは?
さて、上記のデジタルノマドの傾向を考慮した上で、この章ではデジタルノマド向けのインバウンド戦略について考えてみたいと思います。
私が外国人ノマドたちと一緒に旅をして、どのように旅先やツアー、宿を決めるのかなど、実際に目にした情報を元に独自で考えた観光戦略です。観光業のプロの人間ではないのですが、本職がマーケターであること、またリアルのノマドたちを多く見てきたので、インバウンドに悩まれる方のヒントになれば幸いです。
まず最初に考えるべきことは通常のマーケティングと同様に、どこに自分のターゲットがいて、どんなSNSを使うのかを把握することだと思います。それを踏まえて優先順位が高い順にご紹介します。
外国人がアクセスしやすいウェブ上のスペースでの露出 & 口コミ評価
最初に強化すべきは、意外かも知れませんが「Google map」での露出と口コミの増加です。まず、使い慣れて手軽に検索ができるGoogle mapでレストランやツアー会社、体験(例 京都であれば「着物のレンタル」)などを調べる人が多いです。そこでレビュー数と星の数、実際の口コミなどを見て良いところがあればすぐに決めてしまいます。
その他にも、世界中で観光の予約に使える「Get your guide」、「Viatour」、「Airbnb experience」、「TripAdvisor」などすでに海外でも浸透しているサービスへの登録を1〜2個しておくことをおすすめします。一都市に長期滞在し、節約も気にするノマドであれば現地のツアーサイトなどもチェックしますが、忙しいノマドは慣れているプラットフォームで仕事の隙間時間にさっさと決めて予約していることが多いようです。
Google mapであれば初期に広告を出して検索で一番上に出てくるようにして、かつ口コミをサービスの最後に一言お願いして、多くのレビューを一気に集めるような戦略もおすすめです。一度、500〜1000件など圧倒的な口コミ数を手にして、競合とも差がついたら広告をなくしてしまっても良いと思います。
Whatappでの問い合わせを可能にすること
Whatappとは海外で使われているメジャーなメッセージアプリです。日本ではLINEを使っている人がほとんどですが、欧米、南米、東南アジアなど世界のほとんどの国ではwhatappがメジャーなコミュニケーションツールとして使われています。
上記のGoogle mapなどから、Whatappの番号を記載しておき、Whatappでメッセージを送れるように導線を作っておきます。Whatappでは、営業時間外にメッセージが来たら自動返信をする機能であったり、問い合わせ内容を絞るための選択肢を用意しておき、最初のやり取りを自動化することも可能です。実際にメッセージをやり取りする際は、翻訳機も使いながらの対応も可能です。
英語でのわかりやすいウェブサイトとサービス内容の資料を作成
上記の2点で、「検索からリーチ〜申し込み」までの最低限の導線を作ることができました。その次に英語のウェブサイトやサービス内容の資料を作成しましょう。
ウェブサイトはGoogle mapからリンクしておきましょう。信頼につながることと、サービスの詳細を記載したり写真で魅力を伝えることができます。
資料はWhatappで直接情報を送る際に使えます。私は南米でアマゾンツアーに参加した際に、ツアーの内容や宿泊施設など写真付きの資料をwhatappで受け取り、ツアー会社を比較していました。
便利なTips:
今だと、CanvaのAI翻訳を使えばワンクリックで日本語のスライド資料を英語や中国語など、複数の言語の言葉に変換することができます。他にも、単一ページのウェブサイトであれば、パワポ資料を作る感覚でCanvaでウェブサイトを作ることも可能です。
ここまでできたら基本はOKです。更に攻めたインバウンドマーケティングをしたい方は下記も検討してみてください。
「動画」を作れる英語・外国語インスタグラマーによる動画制作&ハッシュタグ戦略
観光地の検索はインスタでする時代。私も20代〜30代前半の外国人と観光スポットの話をすると、みんなインスタで検索を始めます。動画が一番わかりやすく訴求しやすいです。動画を作れるインスタグラマーに依頼してみましょう。
ハッシュタグに関しても、#japantravelphoto (156.1万投稿) #japantravelguide (6.98万投稿) など投稿数が多いものから少ないものを混ぜる戦略で、多くのリーチを狙ってみてください。そのジャンルのハッシュタグについては、インフルエンサー本人が詳しいと思うので、直接相談するのも良いですね。
コンテンツに含めて欲しい「サービスのおすすめポイント」や「ハッシュタグ」、「公式アカウントへのメンション」、「NGポイント」などのディレクションもしっかり準備しましょう。
旅系SEOブロガーによるまとめ記事作成の依頼
インスタでの検索が増えましたが、しっかり情報をまとめたり、場所や食べ物、滞在先などを比較レビューしているブロガーもまだまだ健在です。短いSNSコンテンツでは説明しにくいようなサービス内容など、情報量が必要な際はブロガーへの依頼も検討してみてください。
海外Youtuberへのレポ・PR依頼
情報量が必要なツアーや体験などはYouTuberへの依頼も有効です。
例えば、旅系の海外YouTuberだと、下記のような方がいます。
https://www.youtube.com/@AllanSu
登録者数19万に対して、彼の作成した日本のトラベルガイド動画は100万再生を超えているものも多く、登録者以外にもリーチできるコンテンツを作成できる企画力の高いYouTuberだとわかります。インフルエンサー起用の際は、登録者数やフォロワー数よりも、依頼する内容と関連がある動画やPR案件の動画でどれだけ再生数やエンゲージメントを伸ばせているか確認するのがおすすめです。
意外なのですが、日本より物価の高い欧米を含め、海外にいる外国人インフルエンサーは、日本人インフルエンサーより単価が安いことが多いです。
私はグローバル企業で多くインフルエンサーマーケティングを行ってきましたが、各国のチームメイトが依頼しているインフルエンサーの単価の安さに驚きました。
アジア人向けであれば写真映えを、欧米人向けは学びを多く「その瞬間」を楽しめる体験を
日本を含め、中国や韓国、また南米人も写真をたくさん撮るのが好きな人が比較的多い印象です。特にアジア人であれば良い写真を撮ることが超重要なので、少しせかせかしたツアーになったとしても写真タイムに力を入れてみてください。
逆に、欧米人はこれでもかというくらい質問をしたり「学び」を求める人が多く、またゆったりとその時間を過ごすことを楽しむ人が多いので、急かせて気分を損なわないように気をつけましょう。
私がボリビアのウユニ塩湖で参加したツアーが顕著だったので例としてご紹介します。
ウユニでは十分な日数があったので、日本人御用達のツアー会社、韓国人御用達のツアー会社、Tripadvisorで1位だった欧米人に人気の会社と3社のツアーに参加して比較しました。
韓国人や日本人向けのウユニ塩湖ツアーでは、観光スポットになっている列車の墓場などでの説明はサクッと終了、鏡張りのスポットやトリック写真が取れる乾いた塩の場所では、ガイドさんがものすごい本気でプロ並みの写真を撮ってくれました。SNSで自慢したくなるクオリティです。それと同時に「全く同じような写真がSNSに溢れている」のがちょっと残念な気持ちになります。
欧米人向けでは、地形の歴史など、どうして塩湖が生まれたかの説明がじっくりとされ、写真はツアー客に自由に取らせる形がメイン。夕日の時間にはワインとちょっとしたお菓子が振る舞われ、刻一刻と夕焼けの赤から星空に移り変わっていく時間をワインとともに味わえる贅沢な気持ちを味わえるサービスが提供されていました。代わりに、夕焼け時に撮ったタイムラプス動画のクオリティは、日本・韓国向けと比べると少し劣っていました。
国ごとに違う「時間」の感覚に注意
「10時に集合です」と日本人に伝えたら、大抵5〜10分前に集まる人が多いと思います。
南米であれば、30〜40分遅れは当たり前、逆に北欧などでは時間ピッタリが普通。
これも事例があるのでご紹介します:フリーウォーキングツアー
コロンビアでフリーウォーキングツアーに参加した際、前日の案内メールでは「20分ほどスタートが遅れることがあります」という記載があり、やはり遅れてくる人がいるのでガイドさんが雑談をしながら20分くらいまで待っていました。
逆にノルウェーでフリーウォーキングツアーに参加した際は、「遅刻した場合はおいていきます」と記載されており、本当に時間ぴったりにスタートして、遅刻者がいたら置いていかれるシステムになっていました。
※フリーウォーキングツアーは、世界中の都市でボランティアガイドによって行われてるツアーで、基本無料ですが事前予約制で最後に好きな金額をチップを渡すシステムです。その街の歴史の概要や、危ないエリアなど知ることができて土地勘を持てるので新しい街に行ったら早めに参加するのがおすすめです。
外国人ノマドが深夜帯でも24時間作業できる宿、ホテル、コワーキングスペースの整備
前述したように、日本含めアジアは欧米人にとって仕事をしにくい時差にあります。そのため、24時間いつでも快適に作業したり、安定したネットでミーティングができる施設の需要が高まると予測されます。
デジタルノマドビザで、一都市にずっと滞在するノマドはAirbnbなど使う人が多くなりそうですが、短期間で都市を移動をするタイプのノマドであれば、タビノスのような共有エリアで仕事ができる宿や、温泉付きの快適なカプセルホテルなどの利用もされそうです。実際に私の知り合いの外国人ノマドが使っていました。
「インスタ映え」スポットは外国人ノマドにも有効
ノマドで旅をしながらインスタで友人含めたフォロワーに旅の様子をシェアしたり、記録としてSNSを更新している人は多いです。
リスボンでもインスタ映えするようなおしゃれカフェはノマドに人気でしたし、お花で飾られた店内にブランコまであるようなフォトスポットでの撮影、自分なりのこだわりをもってなんてことない道や花を撮るのが好きな人もいました。常に移動しているからこそ、記念の意味も込めて撮っているのか、ただの海外旅行の外国人と比べるとノマド欧米人は写真や動画を撮る人が多いと肌感で感じました。
また、各国を数ヶ月単位で移動し、世界中で「世界レベル」の絶景を見たり体験をしてきているノマドたちは、好奇心が強い人が多いので、値段が安くて内容もライトな体験よりも、「日本ならではの特別な体験」や「びっくりして思わず人に言いたくなるような刺激的なツアーやサービス」を提供してみましょう。
まとめ:外国人ノマド向けインバウンドマーケティング観光施策について
外国人ノマドについてのイメージは沸いたでしょうか?私が出会ったノマドも一部ではあるので、まだまだ違うタイプのノマドもいるかも知れません。
ただ、基本的に海外で利用されているメジャーなサービスであったり、日本と違う文化や時間の感覚などは今後外国人ノマドの対応をするにあたって、基本として押さえておくべき点になると思いますので、この記事がインバウンドでお悩みの方の参考になれば幸いです。
日本に多くの外国人ノマドが来て、良い形で日本のグローバル化と、異文化の面白さが広まっていくことを願っています!
もし、こちらの記事をご覧いただき、外国人ノマド向けの集客支援サポートやアドバイスを希望される方がいましたら、サイトのお問い合わせフォーム、または私のX宛にお気軽にご相談ください。
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